産婦人科における新生児取り違え事例についての裁判
2014.07.15ブログ
産婦人科医院において新生児の取り違えが行われたことにつき、取り違えられた本人(原告)に対する慰謝料3000万円、両親の精神的損害各500万円が認められた裁判例があります。(判例時報2221号、62頁以下、東京地裁平成25年11月26日判決)
この事案では、取り違えられた原告の真の兄弟3名は、教育熱心な両親の下、恵まれた環境で育ち、市立高校から大学又は大学院に進学し、一部上場企業に就職しています。
一方、原告は、経済的に困窮した母子家庭で養育され、生活保護を受けながら生活し、義務教育である中学卒業と同時に町工場に就職せざるを得ず、その後、自ら学費を稼ぎ、ようやく定時制の高等学校を卒業したとのことです。
取り違えさえなければ、原告は大学卒業の学歴を得ていたはずだという原告の主張に対し、裁判所は、「原告が大学卒業の学歴を得ることができたかどうかは、必ずしも明らでないといわざるを得ず、原告の主張する逸失利益をそのまま認めることはできない」としつつも、これを「慰謝料の算定要素として十分に考慮するのが相当である」として、慰謝料3000万円を認めたようです。
関係者すべてにとって難しい判断を強いる事案ではないかと思いますが、心に刺さる裁判例だったので紹介させていただきました。